素材の歴史を語る
ある教えの中で、ひとの祖先とされるアダムとイブが、彼らの局部をイチジクの葉で覆っている絵画があります。
そのイチジクの葉は、おそらく今でいう『衣服』の役割をはたしていたモノでしょう。
原始的で、現代の価値観では衣服とはとても呼べないモノですが、
それがその時代の衣服であり生地です。
対して現代は、ナイロンやポリウレタンなどの化学繊維をつかった上着、
もっとも一般的な天然素材のコットンを使用したTシャツ。
葉っぱ一枚と衣類とではまったくモノが違いますが、
どちらも衣服の役割を担うモノ。
はるか昔のコトと現代とを比較しているので極端な例にはなりますが、
衣服や素材は時代とともに進化を続けています。
今回はそんな素材についてのお話を
『温故知新』な目線で見ていこうと思います。
フルキヲタズネ、アタラシキヲシル
昔からつかわれていた天然繊維の最新のありかたをチェックしてみてください。
進化する素材
衣服には様々な素材が利用されていますが、
世界の4大文明が発祥した頃からあり、現在も広く衣料として使用されているのは
麻(亜麻)、綿、絹、毛の4素材です。
その歴史にふれてみると麻は人類が用いた最古の繊維(素材)といわれてます。
ちなみに国や地域によって若干異なる部分もあります。
たとえばエジプトは麻、
インドでは綿がつかわれるなど、その土地によってさまざま。
気候風土によって育つ植物が違うのでそうなってしまうのは当然ですね。
ちなみに日本で使用されていたのも麻だそう。
素材としての歴史が古いとされる、絹が使われはじめたのも2世紀頃。
卑弥呼の時代からのようです。
その麻と絹が主に使用されていた時代は長く続き、
日本での綿の使用は戦国時代(16世紀頃)からだとされています。
16世紀の豊臣秀吉の時代までは麻と絹の時代、
17世紀の徳川の時代から20世紀初頭の大正にかけて綿織物が普及していったということです。
ちなみに8世紀頃の平安時代に、日本に漂着したインド系のコンロン人によって
綿織物が伝えられたそうですが、一般的に使われることは少なかったそうな。
『織物といえば綿』と思っている人が多いと思うのですが、
実は綿織物が普及したのは割と最近というコトです。
この頃の身にまとうモノって、服というよりも”装備”に近い感覚なんでしょうね、きっと。
身近な素材をみていきましょう
服についている品質表示タグをみると様々な繊維の名前を目にします。
コットン
リネン
レーヨン
ナイロン
ポリウレタン
ポリエステル
…
など、実にたくさんの種類があります。
その中でもレーヨンやナイロンなどの化学繊維は
絹の代用品として1880年頃から人工的につくられた、歴史の浅い繊維です。
(歴史が浅い故に科学繊維を信頼しないヒトの存在や戦争の影響もあり、 衣服の繊維として広く普及するのは、 もっと先になります)
今回のテーマは『温故知新』なので、むかしから使われていたモノを基準に、
天然繊維のイマを見ていきましょう。
夏にぴったりな機能的天然繊維
『機能素材』といったら化学繊維を思い浮かべそうですが、
その特性を上手くつかった天然素材がたくさんあります。
昔はつくりたくても実現できなかった、
つくる技術がある現代だからこそ製品化できるのでしょう。
麻(リネン)素材
リネンの特徴をまとめた記事があるので読んでみてください。
→『サラっと涼しい』だけじゃない!人類最古の素材“リネン”を知る
リネンの特性
さらっとした感触があり、涼感があるので夏物衣料に最適。
天然繊維の中で一番強度がある。
水に濡れると乾燥時よりも6割強度が増すので、洗濯に強い。
縮みやすく、シワになりやすい。
綿(コットン)素材
天然繊維のスタンダード
コットンの特性
肌ざわりが良い。
吸水性が高いけど乾きにくい。
用途が幅広い。
水分を含むと体積が増え、乾燥させることで元よりも小さく縮みやすい。
毛(メリノウール)素材
メリノウールの特徴をまとめた記事があるので読んでみてください。
→冬はあったか、夏はサラサラ!天然素材『メリノウール』の世界
ウールといえば冬のニットを思い浮かべる方が多いと思いますが、
通気性の良さと高い消臭力で汗をよくかくシーンにこそピッタリな繊維なんです。
メリノウールの特性
消臭効果がある。
格別の柔らかさと、しなやかな肌触り。
かゆみを感じさせないソフトな着心地。
他の素材と比べて毛玉になりやすい。
最後に
天然素材の今昔をザックリとみていきました。
何かあたらしい発見はありましたか?
僕はどちらかというと天然の素材の方が好きです。
ですが天然繊維だから良くて化学繊維だからだめ、といったことはなく、
時代や世代によって色んな価値観があると思うし、それでいいと思っています。
今回は機能的な天然素材についてまとめてみましたが、
化学繊維についてもまた記事してみようと思います。