【ROCOizm】より高みを目指す男たちの物語

倉敷市の西部、山陽の小浪華と呼ばれた岡山を代表する港町、玉島地区。どこか懐かしくレトロな街並みから二人の男たちがおくる至高の品をここに紹介したいと思う。

帽子フリークの諸兄には鉄板のブランドだろう。そうご存知HIGHERだ。

ブランド名の由来は、、、
帽子=体の一番上に身に着けるもの=『THE HIGHEST』と定義、『帽子以上のより良い帽子』=『HIGHER』を創っていくのだと。
そこには「現状の技術や品質に満足することなく、常に向上心を持って「より高みを目指す」のだという信念が宿っている。

まずは、彼らのストーリーに触れておこう。

出会いは前述の玉島地区。多感な中学時代に出会った二人は倉敷という土地柄もあり、おのずとその興味の方向性、日々の会話はファッション中心になっていったのだろう。

会社は違えど共に児島のデニムメーカーに入っていくこととなる。片や生産管理として、片や営業として10年以上の研鑽を積んだ。

その後、紆余曲折ありながら(ここでは紆余曲折の詳細は割愛させていただく。そのストーリーはまた別の機会に、、)

帽子好きが高じて独立することになるのだが、ノウハウは全くなかったため地元玉島の工場の帽子職人に師事をあおぐこととなる。

ただ、その職人の制作のほとんどが天然素材を使用した帽子作り(ブレードと呼ばれる紐上の素材を幾層にも重ねて縫製し、帽子の形に成形していく)であったため、布帛(所謂キャップなどの裁断・縫製の製品だ。)の帽子作りは独学でそのすべての技術を積み上げていったのだった。

いくつものヴィンテージの帽子をバラしてはパターンひとつひとつの形・縫製・仕様、またそれらがどのようなバランスで組み合わされているかを夜通し研究していく。まさに細部に宿る神を一つ一つ紐解いていくかのような作業の連続だった。

そこから得た知見は、まさにHIGHERの名にふさわしい「より高みを目指す」ための血肉となっていることだろう。

そんな彼らになぜ帽子なのかという問いを投げかけてみた。

まず返ってきた答えは、やはり“帽子が好きだから”というシンプルで力強い言葉だった。

そしてその後にこんなことを教えてくれた。
その日のコーディネイトを帽子から考える人はそう多くはない。どちらかというと帽子は最後にという印象がある。

ただ、どんな帽子を合わせるかでコーディネイトの印象は全く違ったものとして映る。料理で言うなら隠し味のようでもあり、スパイスのようでもある。
コーディネイトに加えるまさに味の決め手のようなエッセンスとして、帽子を提案できたら面白い。

またファッション業界では岡山といえば「デニム」というイメージが一般的だが、岡山県南西部では国内でも有数の天然素材を使用した帽子製造の産地(全国シェア90%)ということはあまり知られていない。

古くは100年以上前から続く帽子製造工場もあり、名だたる有名アパレルメーカーの帽子を生産している工場もあるのだと。そういう世界に誇れる技術を継承いきたいという熱い想いも伝えてくれた。

そして制作過程のこだわりは?という質問に対してはこうだった。

一番のこだわりはシルエット=「かぶりやすさ」。

着用の際、頭の形に沿ったフィット感やブリムの角度が自然形成され、全体のバランスがしっくりと落ち着くよう構築している。

時には海外の歴史書や文献を見ながら、時には古着屋を巡って参考にできるものはないか模索と研究の日々を送っている。だが、ヴィンテージのただの模倣をするという選択肢はない。

粗悪な縫製や被りにくい形を雰囲気があるという理由で踏襲することは決してない。あくまでも仕様や生地の雰囲気を参考に現代的に昇華させ、再構築、新しい解釈を持った帽子へと進化させていこうと。

また形と生地の相性も気を使う点だ。

どれだけ気に入った生地があってもうまく形に落とし込めなければ使用しない。またその逆も然り。そういった意味でも全体のバランスは非常に重要なファクターだ。そのバランスが崩れないよう、縫い糸や附属選びに至るまで気を抜けない。

そうして生まれたものの中にはいくつかの定番品もあるが、それらさえも彼らは『完成品』とは考えていない。より良い形・被りやすさを求め、あくなき探求心でアップデートを繰り返しているのだと。
地元への愛、帽子への愛を深く感じる回答だった。

彼らの帽子はシンプルがゆえにごまかしが一切きかない。どこまでも手を抜かずに己の信念の赴くままに縫い上げられた逸品たちは、とにかく被る者の頭になじむ。まるで自分のために作られたのではと錯覚することすらある。

CASQUETTE with Adjuster

ここからは、そんな逸品たちの中からROCOCO別注の品々を紹介していくこととする。

まずは、8パネルスタイルを採用したキャスケットを元に別注したCASQUETTE with Adjusterだ。
こちらは2つの素材を用意したが、共通する形の部分から話を進めていこう。

生地の持つしなやかさをデザインとして活かすため、少し余裕のあるフォルムに仕上げたHIGHER定番のキャスケットをベースにレザーのアジャスターパーツを取り付けてもらった。

One size fits allにしようとしたのもあるが、一番はHIGHER独特のアジャスター部のアーチの美しさに惹かれているからだ。

一般的な帽子のそれと比べるとやや狭く作られた空きはブリムを背面にした際にフロントにくるアジャスター部分が何とも言えない表情のアクセントとなる。

なんというか大人になっても少年の心を忘れないダンディズムとでもいうべきか。

前後左右に自由に動かせるクラウンで重心を変えることで、様々に変化する。
クラウンを左右どちらかに大きく偏らせたこなれたかぶり方も是非試していただきたい。

それではこの形の2品番の生地感をベースにもう少し掘り下げていこう。

ARMY CHINO

1つ目にHT21037 ARMY CHINO CASQUETTE with Adjuster。

軍物で使用されていたチノ素材を再構築した強撚アーミーチノをチョイス。糸の撚りを通常よりもさらに強く撚った生地は耐久性、吸水性、また速乾性に優れ非常に柔らかくシャリ感のある肌触りが特徴だ。

チノクロス自体のこなれた表情を活かすため、馴染むように同色の50番糸で縫い上げられている。そのうえで製品洗いを施し、生地を安定させている。

たっぷり汗をかいた日は噛みしめるように手洗いすることとしよう。

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DENIM

オンスの重いデニム生地は、確かに雰囲気が出るが、キャスケットの自由なスタイリングには少し武骨すぎる。

ではと選んだのが、スラブ糸を使用し、太さや形が不規則で、凹凸感のある生地の表情が特徴の13.5ozデニムを採用。
素朴なデニム本来のニュアンスを持ちながらも、柔らかさに特徴のある生地である。

使えば使うほどに柔らかさを増し、味わい深い表情になる。キャスケットとして馴染んでいくのだ。

新品の時の凛とした表情も良いが、使い込んで額のラインの一部と化した際の少しやれた表情も味わい深いものだろう。

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SELVAGE DENIM CAP with Wappen

ちょっと外せないこちらも紹介しておこう。
HT18006 SELVAGE DENIM CAP with Wappen だ。

HIGHER定番のキャップ型であり、適度な深さに設定したクラウンは頭の形にフィットするように設計されている。一般的なベースボールキャップに比べて少し短めなブリムは骨格を問わずに似合わせてくれるだろう。

生地は無骨な素材感が味わい深い旧力織機で織られた14ozセルヴィッヂデニム。
縫い糸はヴィンテージの風合いを出すため少し太めのキナリ30番糸である。

後述するハンドシェービングで糸が切れないように糸が生地に埋まるくらいの強いテンションをかけて縫製されているのだ。

5種類の芯地の中から厳選された1つをブリムの内側に貼り強度をもたせ、樹脂ワイヤーが入り、自由にブリムのスタイリングを楽しめるようにしているのもにくいポイントだ。ベースボールキャップのような硬いプラスティックの芯を使用せず、持ち運びの際にコンパクトになるのも非常に便利である。

そして熟練の職人によってひとつひとつ手作業によるハンドシェービングを施し、何度も加工試験を繰り返し辿りついた独自の洗い加工を取り入れている。

セルビッチデニムは作成時の気温や湿度など気候の影響を受けやすく、また染料のほんの少しの匙加減の違いで同じ品番でも生地の取り扱いに変更を加える必要がある。そのため、洗い加工はその時々において微妙な調整を施すという。HIGHERのデニムキャップのあの美しい表情は、非常に繊細な加工の上に成り立っているのだ。

被り方は普通にブリムを下げた状態でも良いが、フロントを浅めにブリムを少し上に反らせた状態にするとよりこなれ感を演出できるだろう。

ワッペンはシンプルフォントフェルト。
SFFとでも名付けようか。(奇しくもスプリットフィンガードファストボールの略と同じではないか!)

ひとつひとつ形に合わせて丁寧に縫い付けられており、使うほどに文字のエッジがよれたりフェルトがほつれてダマになったりという経年変化が楽しめるはずだ。

また、ベンチレーションの体をなしていない菊穴もよく見かけるが、HIGHER独自製法のそれは、しっかりと役目を果たす本格仕様だ。

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最後に今後の展望を聞いてみた、その答えも紹介しておこう。

『「HIGHER」という名前の通り、常に向上心を持ってより良い帽子を提供していくだけです。』

なんと力強い言葉だろう。今後のHIGHERの二人の活躍から目が離せない!

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